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 パンドラ 1
 モノカキさんに30のお題より】
 ― CYBORG 009 FanFiction ―
(2003/05/29 09:15)
神崎 真


 ―― 夢だとか、希望だとか。
 そんな言葉を、どうしようもなく滑稽なものだと、そんなふうにしか感じられなくなったのは、いつ頃からだっただろう。
 役者として舞台に立つことで、他人に夢を与えることができる。そんなふうに信じていられたのが、遥か遠い昔に思える。


 今の自分は役者でも、人間ですらなく。
 試作品だの実験体だのと呼ばれて過ごす日々は、それこそ奈落の底よりも、暗く、みじめで。
 それでも。
 俺がこんなふうに夢も希望もなくしっちまったのは、こんな場所に放り込まれるよりもずっと前からだった。


 いつかきっとと、そう思い描いた夢は虚しく破れ。
 必ず叶えてみせると豪語した希望は、地に落ち泥にまみれた。
 場末の薄汚れた酒場にまで墜ちた俺に、残されたのは安物のアルコールばかり。
 夢など、持たなければ良かった。
 希望など、抱かなければそれで。
 変わることない日常を、今も過ごしていられただろうに。
 そうすれば、たかが酒一本につられて、こんな所にまで墜ちてくることもなく。


 ああ。
 なんだって、俺は。
 夢なんて見ちまったんだろう。


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モノカキさんに30のお題

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