君は誰
 モノカキさんに30のお題より】
 ― Makoto.Kanzaki Original Novel ―
(2002/12/25 17:01)
神崎 真


「おまえ誰だ?」
 ベッドの上から問いかけると、その少女は困ったように、ちょっと首を傾げてみせた。
「誰だと思う?」
 そんなふうに、問い返してくる。
 俺は眉をひそめて考え込んだ。けれど幾ら記憶を探ってみても、目の前の顔に見覚えはない。
「判んねえ。初めて会うし」
 正直に答えると、少女は一瞬息をつめたようだった。
 だが、すぐに何事もなかったかのように、笑う。
「じゃあさ、これから覚えてよ。あたしの名前は……」
 そうして一方的に名乗り、さらに無理矢理こっちの名前を聞き出して、それから部屋を出ていった。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
 ひらひらと振った手を最後に、扉を閉める。
 普通、男の前で年頃の女がトイレとか言うか?
 どこか唖然とした面もちで見送ってしまう。
「変な女……」
 呟いて、とりあえずベッドから下りようと身体を動かした。
 と、手の甲にぽつりと水滴が落ちる。
「 ―― ん?」
 雨漏りでもしているのだろうか。天井を見上げて出所を探した。
 その動きで、さらに頬を伝う雫。
「あ……?」
 思わず手で触れて確認した。
 涙が溢れている。
 悲しいわけではない。どこかが痛いわけでも、苦しいわけでもない。
 それでも涙が流れて止まらない。


 ―― 何故だろう。


 とても大切な何かを、忘れているような気がした。


(2002/12/25 17:17)


 短文挑戦第二段。(第一段は「03.鬼」です)


モノカキさんに30のお題

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