遊園地  キラー・ビィシリーズ 番外
 モノカキさんに30のお題より】
 ― Makoto.Kanzaki Original Novel ―
(2003/2/12 10:56)
神崎 真


 目の前を、直立二足歩行するネズミが歩いていった。
 頭ばかりが大きい不自然な体型に、サスペンダーで吊る形の半ズボンをはいている。三日月型につり上がった巨大な口の下には、鮮やかな赤い蝶ネクタイ。
 見上げる長身のまわりに、腰までしか届かない背丈の子供達が、幾人もまとわりついていた。明るい歓声を上げながら、我先にとその身体に触れ、興味を引こうとしている。
 ジーンはそんな様を冷めた目で眺めていたが、前を通り過ぎかけた巨大ネズミが、ふと行き足をゆるめた。それから大仰な動きでジーンの方を振りかえる。
「…………」
 表情のうかがえない目に見つめられて、ジーンは思わず後ずさりしそうになった。だがその相手は構うことなく、子供達を引き連れたまま歩み寄ってくる。
 そうして彼女の目前に突き出された、おおざっぱな作りの右手。手袋をはめたいかにも不器用そうな指先に、細い糸が挟まれている。
「あ、えっと、その」
「 ―― ?」
「……ありがとう」
 あきらめて風船を受け取ったジーンに、着ぐるみは大きくうなずいてみせた。空いた手でぽんぽんと彼女の頭を撫でてゆく。まわりの子供達から羨ましげな声が上がった。
 再び歩き始めた着ぐるみ達を、ジーンはため息をかみ殺して見送る。
 その後ろ姿へと、聞き慣れた声がかけられた。
「あらジーン、風船もらったの? いいわねぇ」
「欲しけりゃやるぞ」
 すがめた目で振り返ったジーンに、獣人は残念そうにかぶりを振った。
「アタシが持ってても似合わないんだもの」
 そう言って小さく肩を落とす。
 確かに。
 宇宙船ふな乗りのよく着ている、ごついデザインのジャケットを着た身長二メートル近い大男が、ピンクの風船を持って歩いている図、というのは見ていてあまり楽しくないだろう。
 ましてその隣に、絵に描いたようにそんな行動の似合う美少女が、連れだって歩いているのであれば、いっそうのこと。
 恨めしげに見下ろされて、ジーンは今度こそ深々とため息をついた。
「俺だって、似合いたかねえよ……」
 しみじみとそう呟く。


 ここは、某星某所の巨大遊興施設テーマパーク
 名を挙げれば、場にいる十人中九人が、行ったことはなくともあああそこかと納得する、そんな著名な遊園地である。
 その名を冠される場所は一箇所ではなく、同じ資本を持つ兄弟施設が連邦内に幾つも存在していた。もちろん互いの集客を妨げぬよう、適度な距離をおいて。そして共通した名と共通したイメージキャラクターを下敷きに、様々な施設アトラクション行進パレード映画シアター関連商品キャラクターグッズの販売などを手がけ、たいていの人間が一度は行ってみたいと願い、一度訪れた者にはもう一度行きたいと、そう思わせることに成功している。
 企業資本の商業施設レジャーランドとしては、見事な成功例であった。
 もっとも、例外というものは、いつの時代いつの場所にも必ず存在しているもので。
「……ったく、なんだって俺が」
 中央広場の長椅子ベンチに腰掛けた少女ジーンは、組んだ膝に頬杖をついて、ほぅと嘆息した。身体の輪郭ラインにぴたりと沿ったスーツに、膝丈のブーツという、いつもと同じ素っ気ない服装の彼女は、それでも実にしっくりと場の雰囲気になじんでいた。
 白磁にも似たなめらかな頬は、周囲の喧噪にあてられたのか、うっすらと上気しており、長い睫毛に縁取られた大きな瞳が、色鮮やかな建物や行き交う人々の衣装を映してきらめいている。なによりも、楽しげに走りまわる子供達の多くと同じその年頃が、彼女をこの場所へと、実に自然に溶け込ませていた。
 しかし……それさえも微笑ましく映る、その可愛らしい仏頂面は、けして彼女が楽しんでいるわけではないことを示している。
 深く組んだ足の膝から先を、苛立たしげに揺すった。
「あら、負けたら何でも言うこときくって、そう言い出したのは貴女じゃない」
 買ってきたばかりのクレープを食べながら、ハルがぱちりと片目を閉じる。
「……まさか負けるとは思わなかったんだ」
 むすりと呟いて、ジーンもクレープを囓った。イチゴソースのたっぷりかかったバニラクリームは、悔しいことに彼女の好む味だった。ちなみに横でハルが食べているのは、ピーナツバター入りバナナカスタードという、さらに甘さ大爆発な代物である。
 ジーンが来たくもない遊園地になど遊びに来る羽目となったのは、いわゆる罰ゲームというやつだった。旧知のハルとカードゲームで盛り上がったあげく、負けた方が勝った方の言うことを一つだけ聞いてやる、という話になったのだが ―― その結果が、要するにジーンの惨敗、とそういうことになったのである。
 ちなみになぜ遊園地かというと、ハルが是非一度来てみたかったからだということだ。きれいなものや可愛いものが大好きで、常々そういったものへの憧れを隠そうともしないハルであったが、いかんせん彼の外見はあまりにもいかつすぎた。レースもフリルも、広がり風にひるがえる柔らかなスカートも、残念ながら彼にはまったく似合わない。同様に、ディフォルメされた可愛らしいキャラクター達の待つこの遊園地も、彼が一人で足を踏み入れるには、さすがに敷居が高かった。
 場の雰囲気を読む繊細な神経とそれなりの羞恥心、人並み以上の審美眼を兼ね備えたハルは、おのれのごつい外見を悲しみつつ、楽しげな映像を見るだけで指をくわえていたのである。
 そして今回の罰ゲーム。中身はともかくとして、外見はハルの理想にもほど近い、小さくも可愛らしいジーンとのお出かけ。 ―― ちなみにこの場合の理想とは、恋愛対象としてではなく、自分がそうなりたいという変身願望としてのそれである。これを逃す手はなかった。
 名付けて『年端もいかない子供にねだられて、一緒に遊園地へ付き添ってきた親戚のお兄ちゃん』作戦である。
 ―― どっからどう見ても、お前の方が楽しんでるのはバレバレじゃねえか、とはジーンの内心の声だ。
 しかし長年の憧れだった場所を訪れたハルは完全に舞い上がっており、もはや周囲の耳目などほとんど忘れてしまったようだった。やれあっちで芝居仕立てのショーが始まるだの、こっちでは立体映像ホログラムを駆使した観客参加型のアトラクションが人気だのと、開園直後からあちらこちらへと走りまわり、上機嫌ではしゃいでいる。
 いまも少し休もうと言い出したジーンを座らせておいて、自分は案内の小冊子パンフレットに載っていた軽食売場スタンドへと向かい、可愛らしい包装ラッピングの施されたクレープや飲み物を山のように買ってきている。
 次はどこへ行こうかと鼻歌混じりで冊子をめくっているハルに、ジーンはまだ当分帰れそうにないと、げっそり肩を落とした。そうしてちらりと反対隣を見上げる。
「……お前も良くつきあってるよな」
 感心した口調で呟いた。
 ジーンを挟んでハルと反対側には、カインが腰を下ろしていた。彼もまた、いつもと変わらぬ漆黒のスーツに漆黒のブーツ、目元を覆うスクリーングラスを着用した、どこまでも遊園地にはそぐわない、無彩色の装いをしている。
「…………」
 深く足を組んで座る青年の表情は、目元が隠れていることもあって、ほとんど読むことはできなかった。濃いスクリーングラスの下で、その目がどこを見ているのかもまた然り。
 ちなみにそんな彼が黙々と食べているクレープは、当園特製ドレッシング入りツナサラダだったりする。
 左にいかつい獣人、右に黒ずくめの寡黙な青年が座るその一角。どこまでも場から浮き上がりそうなそんな彼らをも、それでもなんとなく受け入れている遊園地というものの空気に、ジーンはある意味で感嘆さえ覚えた。
「さて、と」
 ようやく行き先を決めたのか、ハルがぱたりと冊子を閉じた。
「今度はショッピングにしましょ。ここでしか売られてないぬいぐるみとか、服とかがたくさんあるのよ」
 語尾にハートマークがつきそうな勢いで、にっこりと微笑む。
 どうやら限定商品を買い漁るつもりらしい。
「……オッケ」
 もはや逆らっても無駄だと承知しているジーンは、さっさと苦行を終わらせようと、重い腰を上げた。食べ終わった紙屑を集め、やはり凝ったデザインを施されたゴミ箱へと向かう。その後ろに手分けしてゴミを持ったカインが続いた。
 ハルもまた、残った食べ物を整理して、持ちやすいようにまとめている。どうやら歩きながら食べる気らしい。
 そうして彼らが動き始めた、ちょうどその時であった。


 パァンという、乾いた音が鳴り響いた。
 様々な音楽や、乗り物の行き交う音に満たされたこの場所で、何故か意外なほどに耳をひいた、破裂音。
 あたりを満たしていたざわめきが消え、軽快な曲ばかりが空々しく流れ続ける。
 足を止めた人々が、いっせいにひとつの方向へと目を向けた。
 視線が集中した先にいたのは、この場にひどく不釣り合いな、迷彩色の戦闘服を着た男達だった。手に手に火薬式の銃を構え、弾帯を肩からはすかいにぶら下げ、剣呑な目つきであたりを睥睨している。一人の男が見せつけるように掲げているのは、大人の頭ほどの卵形をした物体カプセル。明らかに、爆発物だ。
「 ―― 全員動くな!!」
 いまだ硝煙を上げる銃を構えなおし、指導者格とおぼしき一人が、低い声で恫喝した。
「我々は東部アステリア地区解放同盟、イラドゥークである! この爆弾はこの施設の半分を吹き飛ばす威力がある。死にたくなければ、その場に膝をつきおとなしく指示を待て!」
 その言葉に合わせるように、他の男達が四方へと銃口を向け威嚇する。
 銃の先で、引きつった悲鳴が上がった。まだ状況の判っていない子供達を、両親達が腕の中へとかばい込む。
「……テロリストか」
 ジーンは口の中で呟いた。
 男達の気をひかぬよう、そろそろと両手を挙げながら観察する。
 イラドゥークと言う名に聞き覚えはなかったが、周囲の反応からしてこの惑星ほしではかなり著名な存在らしい。いわゆる過激派というやつか。
 この都市部で迷彩服など着ている点や、見た目は派手だが持ち運びしにくく威力も低い火薬式の銃を使っているあたり、あまりまっとうな組織とは思われなかった。
 しかし、民間人を制圧しようと考える場合、判りやすい脅威を与える手段として、それらの装備は有効ともいえる。そこまで計算した上での行動だというのであれば、あるいは手強い存在かもしれない。
 ともあれ、しばらくは様子を見た方がいい。
 ほかに仲間がいないか、またどれだけの装備を用意しているのか、目的は何なのかといった情報を集めないことには、どうにも動きようがない。
 一般人達にならって姿勢を低くしつつ、ジーンはハルの方へと視線を流した。
 ハルことハロルド=ヴィドゥーシャは、こう見えても腕利きの解析屋兼ジャンク屋であるのだが、その実、裏では趣味の情報屋も営んでいたりする。違法すれすれだがあくまで合法な表の顔とは異なり、裏ではいろいろと大きな声では言えない手段をも使っているらしい。その分かなり客も選ぶのだが、カインとジーンは常連の得意先であった。
 そういった彼であれば、この東部アステリア地区解放同盟とかいう、長ったらしい名前を持つやからについても、何か聞いたことがあるのではないか、と。そう考えたのだが。
 しかし ――
「ハル……?」
 凍りついたように立ち尽くし、己の手元を見つめている獣人にジーンは眉をひそめた。テロリスト達の言葉も、彼の耳には入っていなかったようだ。だがそんな目立つ真似をしていては、男達にいらぬ警戒を抱かせてしまう。目をつけられないうちに、早くしゃがみこんでしまうべきなのだが。
 おびえた子供の振りをして駆け寄ってやろうかと、そう考えるより早く、テロリストの一人が彼に気づいた。
「貴様、膝をつけと言っただろうが!」
 銃を突きつけ恫喝する。
 しかしハルはそれにも反応しなかった。よく見れば、その巨体がわずかに震えている。男はいらだたしげに舌を打った。が、ふとハルが見ているものに気がついたらしく、表情を動かす。
 ハルが凝視しているのは、自分が持っていた飲料シェイクの器であった。
 まだほとんど中身の残っていたそれは、見事にひしゃげ、甘い香りを放つ液体がハルの手を濡らしていた。最初に威嚇で放たれた銃弾が、たまたまハルの指先をかすめ、器の半分を吹き飛ばしたのだ。
 もしもわずかにそれていたら、弾はハルの肉体を貫いていただろう。
 紙一重で命を拾った彼は、至極運が良かった。いや、本当に運が良かったならば、テロリストに襲われるなどという事態に、そもそも遭遇しないであろうが。
 目の前を銃弾が掠めるなどしては、恐怖に動けなくなるのも当然だ。テロリストの男は嘲笑を浮かべて、震えるハルへと近づいていった。
「そら、さっさと座りな。座れって言ってんだよっ」
 銃身でこづくようにして注意を引き、言うことを聞かせようとする。
 その先で、手元に目を落としたままのハルの震えが、さらに大きくなった。
「……の、に」
 掠れた呟きが口元から漏れる。
「ぁあ?」
 いぶかしげに声を上げた男が、聞き取りやすいように耳を近づけた。
「せっかく……せっかく楽しみに残しておいたのに ―― ッ!!」
 絶叫したハルが、いきなり男の襟首をつかみあげた。
 二の腕の筋肉が盛り上がり、武装した成人男子を片手で宙に吊り上げる。
「な……!?」
 テロリスト達が唖然とした声を上げた。とっさに銃こそ向けたものの、引き金を引くことを忘れている。そんな彼らを、ハルはぎらつく目で睨みつけた。
「よくも台無しにしやがってッ!!」
 重低音の男言葉で叫ぶ。
 同時にぶら下げていた男を、仲間めがけてぶん投げた。固まって立っていたテロリスト達を、宙を飛んだ身体が直撃する。
 さらにそれを追ったハルは、男達の間に殴り込んで行った。巨大な拳で、当たるを幸いなぎ倒してゆく。
「ちょ、ハル、待……」
 突然の展開に、ジーンは止めようと声をかけたが、とても耳に入る状態ではなかった。
 ハルは確かに大柄で力も強いのだが、それはあくまで人種的にそうだというだけであって、特別に戦闘訓練を受けた経験などはない。故に相手がプロであった場合、力に任せた彼の戦い方では、あっさりやられてしまうのがおちであった。まして相手がここにいる人間だけとは限らないのだ。そんな考えなしに突進などしては ――
 危ぶむジーンの前で、案の定、落ち着きを取り戻したらしい男の一人が、離れた位置から銃を構えた。後ろを向いているハルは、まったく気がついていない。
 聞き苦しい悲鳴が上がった。
 ハルを狙っていた男が、腕を押さえてのたうち回っている。
「…………」
 カインが無言で光線銃ハンドレーザーをしまい込んだ。
 普段めったに飛び道具を使わないカインだが、それでも有事に備えて常に携帯はしている。珍しくそれを使用したカインは、しかしすぐにホルスターへと戻し、おもむろにベルトの裏からこぶりな折り畳みナイフを取り出した。
 ぱちりと刃を起こしながら、すべるような足取りで乱戦の中へと入り込んでゆく。
 脇を通り過ぎる一瞬、その表情が目に映った。
 余人が見れば、まったく感情の読みとれない無表情な横顔だったが、長いつきあいのジーンの目には、非常にうそ寒いものを感じさせた。
「……もしかしてあいつ、実はめちゃめちゃ楽しんでたのか?」
 思わずそんな呟きを漏らしてしまう。
 そうやって立ち尽くしている間にも、テロリスト達は次々と倒されてゆく。
 やがてジーンは、深々とため息をついた。
「ったく、仕方ねえな」
 首元へと手をやり、無造作に首飾りチョーカーを引きちぎった。
 ひとつかみの金属粒が上向けた手のひらに浮かび上がる。小指の先ほどのそれらは、まるで虫の羽音のような低い振動音を放っていた。
「行け!」
 鋭い指示とともに、脳波誘導型小端末『ビートル』が獲物を求めて飛び立った。
 手始めに十五メートルほど離れた建物から狙撃しようとしていた男を、窓から叩き落とす。さらに一般人に混ざって身を隠していたテロリスト達を撃ち倒しつつ、ジーンは施設案内ガイド用の情報端末を探した。ハッキングして、テロリスト達がどの程度園内に展開しているのかを確認するためだ。
 見当をつけて歩き始めた彼女の後ろで、投げ飛ばされた男が一人、ゴミ箱をなぎ倒して転がっていった。


◆  ◇  ◆


 ぺこぺこと繰り返し頭を下げる関係者達と別れ、ジーン達は暗い夜道を帰途についた。三人並んで警察の駐車場へと向かう間、ハルはにまにまとご機嫌な笑みをたたえ続けている。あちこち腫れたり青痣のある顔でそんな表情をされると、普段より五割り増しで恐ろしかった。服は所々破れたりほつれたりしており、殴られたせいで痛みも相当あるはずだ。が、どうやらそのあたりはまったく気になっていないらしい。
「んふふふふ」
 牙をのぞかせる口元から、重低音の含み笑いがこぼれ落ちる。
 事情聴取やその他諸々で、時刻は既に深夜近い。同じことを何度も話させられ、遅くまで拘束され続けた。ほとんどかすり傷ばかりとはいえ、節々は痛むし腹もすく。せっかくの休日は散々なものになってしまったし、さっさと帰って休みたいというのが正直なところだ。
 それにも関わらず、なぜに彼がこれほどまで浮かれているのかというと、その理由は両手に抱えた紙袋の中身にあった。
「このぬいぐるみ、ホワイトバージョンはすっごく人気があってね、いつもすぐに売り切れちゃうのよ。それにこっちのマグカップ、三百個に一個だけ模様が違う超限定版なの!」
 うきうきと弾んだ口調で解説する。
「それから ―― 」
 いつまでも続きそうな説明を、ジーンは右から左に聞き流した。
 貴重な限定商品レア・グッズを手に入れてハルは嬉しいかもしれないが、ジーンにしてみれば単なる玩具である。どうせせしめるなら、もっと換金しやすい物にすればいいものを。
 ため息をついて、並んで歩くもう一人を見上げる。
 お前ももうちょっと口出しすれば良かったのに、と言いかけたジーンは、しかしカインが手にしている鮮やかな色の布を見て、思わず口元を引きつらせた。
「…………」
 スクリーングラスで半ば隠れたその顔は、ほとんど表情など見てとれない。しかし ――
「カ、カイン……?」
 それは、と指差した先で、カインは布の塊を広げてみせた。
 柔らかなフリルとリボンで飾られた、エプロンドレス。あの遊園地のイメージキャラクターが着ているものと同じデザインだ。もちろんサイズは、ジーンにぴったりである。
 これは、間違いなく、着させられる。
 冷汗を流すジーンの背後で、ハルがにこにこと宣言した。
「また行きましょうね?」
 紙袋の中から、三人分の年間自由入場証フリーパスポートチケットを取り出す。
 はいと差し出されたそれを、カインがしっかり受け取った。そうして丁寧にポケットへとしまう。


「二度と行くかーーーッッ!!」


 ジーンの絶叫が暗い夜道へと響きわたった。


(2003/2/24 11:20)


……すいません、遊びすぎました。書いててものすごい楽しかったですけど(笑)
おかぴーさんからいただいたネタで『ジーンたちの休日。遊園地でのテロ事件』です。
それにしても、いいかげんハル姐さん出張りすぎですがな(苦笑)


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